「美味しい」と言えない理由について

 

最近、外食ができない事もあり、我が家に1,2人ずつ招待して家で宴会をする、という事をやっている。

 

先日も大学の友人が2人やってきてくれた。2人とも同じゼミだった同い歳の男性で、私も仲が良いが旦那とメチャクチャ仲が良い。

 

Aくんは私の旦那の親友であり、今は同棲している付き合って5年弱になる彼女がいる。

これがなかなかクレイジーな男で、リュックにワインやウイスキーを瓶ごと入れてくるくらい酒好き。

そして歴史や政治・戦争の話にも詳しいが聞けば教えてくれるくらいで自らは進んで話さないスマートな男だ。

でも語り口調や持ち物に独自の感性があるため大学の頃から「なんか変わった人」と目立っていた。会えば会うほど「言葉には出さないが人が好き」だと分かる不器用な男だ。

 

Bくんも同じく旦那と仲がいい。そして私は弟のように思っている。というのもこの男、5年近く付き合って婚約していた彼女に結婚式4か月前に捨てられ、ショックのあまり貯めていたお金を飲み会や合コン等で散財したという過去があるのだ。

今では彼女もいるそうだから一旦安心しているのだが、会う度に「元気?」と聞いては「もう大丈夫だってw」と返されている。(もちろん「彼女がいる=幸せ」ということではないけど、あの子は生活能力に不安があるため誰か支えてくれる人が必要だと思っている)

Bくんは大学の模試で学内1位を取りまくるぐらい努力家で頭も回るのだが、ゆるーい雰囲気や声が小さいことなどから何故か目立たない。そして「少年」のような心を持っている。自分が好きな物は反対されても上手く切り抜けながら貫き通すし、嫌なことはよっぽどの事じゃない限り断る。良くも悪くも正直に自分を生きている。でも目立たないからあまりキツくは見えないしニクめない不思議な男なのである。

 

AくんとBくんは大学入学直後から割といつも一緒にいた。まぁうちの大学は男子がメチャクチャ少ないから必然的ではあるが。

この2人の関係もなかなか面白くて、Aくんがクレイジー発言をしてBくんが突っ込むこともあるし、Bくんがマジの天然発言をしてAくんが突っ込むこともある。そしてそれに旦那が加わる事もあるのだが、例文ができないほどカオスなことになるため、ほぼ抱腹絶倒している。

 

まぁそんな2人が来てくれたため、それはそれは愉快だった。

大学で1年、卒業してからも年に1,2回は会ってるため、まぁまぁ長い付き合いにはなってきたのだが、今回また新たな発見があった。

 

家での宴会のため、まぁ食事は私が用意するのだが、友人に食事を振る舞うのってけっこう緊張する。ぶっちゃけ施設の利用者さんに食事を出す以上に緊張する。(しかも皆、飲食関連の仕事だし)

 

料理はピザとかは既製品だけど、それ以外は施設で培った知識を使って料理したり、リュウジ氏のバズレシピを拝借している。

 

Aくんはとにかく調理風景を見てきた。チラチラどころではなくガン見だ。

 

耐えきれず「メッチャ見てくるやん…」と言ったら、

 

「あぁ。まぁ気にせずに。俺、人の調理工程が見たいやんね。同じ料理でも人によって野菜の切り方とか切る長さとか違うし、何から調理するかも、調味料に何を入れるかも変わるやん?」

 

と言われた。私も飲食店に行くとキッチンを見てしまう癖があるため、「あぁー、職業病だな?」と言ったら首を傾げて「いや?ただの俺の趣味。」と言われた。やはりこの男は私の予想の斜め上を行く

 

 

Bくんは「おー、なんかメッチャ良い匂いする。」と言ってきた。

「ホント?ちょっと味が濃いかもだけど」と返したら「ん?でも匂いだけでも美味そうだよ?」と言ってきた。この男、可愛い。

 

 

料理を食べてからの反応もAくんとBくんでは正反対だった。

 

Aくんは酒を飲みつつ黙々と食べ、Bくんは「ナスが美味い」と言いながら食べた。

私はこの時点で酒をけっこう飲んでいたため、Bくんに「美味い」と言われた事がメチャクチャ嬉しく、「やっぱり美味しいって言われると嬉しいね!」と言葉に出していた。

 

するとAくんが「おぉ。そうですよね。」と言ってきたため、「Aくんも彼女さんにちゃんと言うんだよ?」と言った。

そこでAくんは「うーん、自分でも困っているんだよね。」とまた斜め上を行く返答をした。

 

 

どういう事か聞いたら、「美味しい」よりも先に

 

「これは何で味がつけてあるのか」

「これに○○を入れるとさらに美味しくなりそう」

「あの味付けでもいけるのではないか」

 

等が浮かんでしまうから、「美味しい」までに辿り着けないのだそうだ。

 

旦那もBくんも「たしかにAが『美味しい』って言ってるのあまり聞いたことがない」と言い、Aくんは再び「困ってしまうねー」と独りごちていた。

 

Aくんは父親が食のこだわりが強い人のため、昔から無意識のうちに「美味しい」の先にある思考の方が先にくるようになったのかもしれない。

もしかすると、ただ単純に「恥ずかしくて言えない」というのもあるのかもしれないが、あっても僅かな気がする。AくんもAくんで素直な男だから。

 

うちの旦那は私の作る料理を大好きでいてくれるので、「これ美味しい」とか「これは外食がバカバカしくなってくる」とか褒めすぎなくらい褒めてくれるし、ほぼ毎日「料理作ってくれてありがとね」と言ってくれるからありがたいのだが、

実際問題「旦那が料理を全然褒めてくれない。まるで家政婦扱いだ。」と不満を持ち離婚してしまう夫婦も珍しくない。

 

きっとAくんの彼女さんなら「なんで言わないの?」と私と同じような感じで何気なく聞いているとは思うのだが、世の中にはこういう考えの人もいるんだなぁと学んだ瞬間だった。

 

友人から学びを得ることはたくさんある。これからも人との繋がりは大切にしたいものだ。