得意料理ってなんだろう

 

 

 

 

前の職場で4年近く大量調理をしていたため、ありがたい事にけっこう色々な料理ができるようになった。

それでも、「得意料理ってなに?」って聞かれると困ってしまう。家で作るのと大量調理だと訳が違うし。

 

大量調理だったら

「煮物だったら煮てる間に他の調理が出来るから炒め物より好き」

「漬け焼きだと指定のレシピの漬けダレに漬けてあるのを鉄板に並べてスチコンで焼くだけだから楽」

「塩昆布和えだったら塩昆布で和えて足りないと思ったら醤油を少し入れるだけだから楽」

とか思うのだが、それは得意というより業務上の都合だ。「主菜が大変でも副菜が楽ならこなせるか」というものだ。

(もちろん、その知識たちは家の料理で「美味いお手軽メニュー」として重宝しまくっているが)

 

家の料理で得意料理というと本当に浮かばない。ただ、だからといって料理は苦手ではない。むしろ苦手だったら調理の仕事4年もやってないだろうし、そんな事言ったら教えてくれた調理師・管理栄養士さんに失礼だ。

かといって、「料理が上手い」とも誇って言えない。まぁぶっちゃけ「店ならではのラーメンなど家で作れないもの以外は、自分で作る方が自分好みの味にできるから食費節約できるし美味い」とは思うが、もっと美味い料理を安定して作る人がザラにいたから。そりゃもちろんベテランさんと就職するまで野菜炒めとか炒り卵とかしか作ってなかった私では料理を作ってきた回数が違うし実力差があって当たり前だ。

それでも「自分料理上手いから」と思って「うわ今日の料理微妙だ」と思うより「料理は適度にできる」と思って「今日の料理メッチャ上手くできた!!天才かもしれん!!」と思った方がショックが少ないし料理を作った自分を褒めれる。やっぱり頑張ったからには自分で自分を褒めたい。

 

あと、唐揚げとかは美味しく作れる自信があるが、それはネットで調べていくつかのレシピを試して「これが1番美味い!」と思ったレシピを「我が家の味」としただけで「私の得意料理」ではない。

私の「母の味」は焼きうどんなのだが、うちの母の焼きうどんには酢が入る。ベースの味は顆粒本だしや麺つゆなのだが、最後に少しだけ酢が入るのだ。これが何故かさっぱりしてメチャクチャ美味しい。昔から当たり前のようにこの焼きうどんを食べていて大好きだった私は今でも「酢の入ってない焼きうどんは物足りない」と思ってしまう。そして母の焼きうどんを食べると「やっぱりこれだわ」と安心するのだ。これこそ「得意料理」というものだと思う。

 

自分の得意料理があまりにも分からないから旦那に聞いてみた。そしたら「卵でとじる系うまいよね。親子丼とか。あとスープも好き。それからやっぱりハンバーグかな!あれはビックリした!」と言われた。

 

ハンバーグ。それは私が卵焼きと同等に「苦手な料理」の1つだった。

 

私は不器用のため、まずハンバーグが綺麗な楕円形にできない。そして同じぐらいの量を取るということも苦手だから大きさがまばらになってしまう。これが職場では致命的だった。

大きさがまばらだと不平等だし、人数分あるはずだったのに足りなかったりメチャクチャ余ってしまったりした。そして他人に提供するのだから形は綺麗な方が良い。そんなだから私は「施設でハンバーグが一番ヘタな調理員」で有名だった。

旦那にも恋人時代から親子丼とか色々な料理を振る舞ってきたが、ハンバーグだけは絶対に作らなかった。作りたいとも思わなかった。そもそもハンバーグって面倒臭いのに、わざわざ「ヘタ」と呼ばれるような物を作りたくない。それなら他の「最低限でも美味しいもの」を作った方がよっぽど良い。

 

だが、ちょうど2週間ほど前、なんとなく料理へのヤル気が出て冷蔵庫を覗いたら、挽き肉と豆腐があり「せっかくだし豆腐ハンバーグでも作ってみっか」と思ったのだ。今思うと麻婆豆腐でも全然よかったのに。そして施設で教わった「和風豆腐ハンバーグ」を思い出しながら作っていった。

 

豆腐は水を切って軽く重しをのせておく。みじん切りにした玉ねぎを炒めて粗熱をとってる間に挽き肉に塩胡椒ふってコネコネ。挽き肉に粘りが出てきたら豆腐を手で軽く絞りながら入れて、玉ねぎも投入。ここで隠し味に液体みそをほんのちょっと入れる(白みそでもOK)。ちなみに千切りにした大葉を入れるとさらに美味い。

豆腐ハンバーグは焼いても形があまり変わらないから軽く空気抜いて形作って窪みは作らずに油を敷いたフライパンにのせる。あとは火をつけて酒振ってフタをして蒸し焼き。5分近く焼いたら裏返してもう5分。

ハンバーグを焼いてる間に上にかける餡を作る。千切りにした玉ねぎと水をフライパンに入れ火にかける。沸いたら麺つゆを入れて味見して砂糖・醤油・みりんを好みの濃さになるまで適宜入れる。玉ねぎに火が通ったら1回火を消す。多分この頃にハンバーグが焼けてるからハンバーグから出た肉汁&油を餡に入れる。水溶き片栗粉をまわし入れてよく混ぜ、弱火にかけてとろみが付けば完成。

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そんな感じで出来たのがこれだ。まぁ見た目は前述の通り良くない。

餡の具材はエノキとかキノコ系でもいいし、そもそも餡作るのめんどくさかったらポン酢で食べてもいい。おろしポン酢とか最高。

 

(ちなみに元職場は調味料の分量が漬け焼きのタレとか以外は決められていなくて、使う調味料だけを上司から教えてもらってあとは「舌で覚えろ」というやり方だったため、調味料を測るということをあまりしない。故に他人に教えるのが難しい)

 

 

何も言わずに作っていたため、出来上がった豆腐ハンバーグを見た旦那は「わぁー!!ハンバーグだ!!しかも餡がかかってる!!うちでハンバーグが食べれるなんて!!」と子供のように喜んだ。そして一口食べて「美味い!!楽園だ!!」とバクバク食べてくれた。そして「毎週食べたい!」とまで言ってきた。

まさか自分の苦手料理でこんなに喜んでくれるとは。と私は衝撃だった。たしかに味は美味しかったけど、どうしても「ヘタだ」というのが頭を付きまとっていたから。

でも、自分の大切な人に喜んで貰えるならそれが1番か。なら得意料理で……良いのか?(施設のレシピだけど)

少なくとも「苦手料理」では無くなった。(これから先に大量調理の仕事につかない限りは)

 

これで私の苦手料理はいよいよ「卵焼き」になったが、旦那に「我が家はかに玉(永谷園の)をしょっちゅう食べるから作る必要ないし、そもそも作ったところで卵焼き論争が始まると思うからやっぱり作らなくていいよ。」と言われたので、克服する日が来るのかは分からない。